手順12  裏彫り 口 角  仕上げ彫り

裏彫り

裏彫りについては、他の能面と変わらない。裏面に模様を彫る場合は、一旦綺麗に
仕上げてから彫る(ここでは裏の模様は彫っていない)。

写真左のように鋸でV字形にカットを入れたが、このような状態では固定しにくいので、
手順1の側面カットのとき行うとよい、クランプで固定して、縦引き鋸を使うと意外に
簡単である。裏彫りの量が少なくて済むし、切れ端を角に使うことができる。


 口を彫る   耳の形を整える

口の彫りは、マニュアル化が困難である。

口型D型紙と写真を参考に裏面からも彫る。

但し、表からの彫り可能なギリギリまでは表側から彫り、その後裏側から整形彫りをする


ここで耳の形を仕上げる

頭部の頂上と顎の下部に凹みを彫る

角を彫る

角は角柱材に型紙を写し

写真のように手前から順に鋸で上下と左右の面を粗引きをする、糸鋸を使えばカーブが正確に出る。
後は稜線を彫刻刀で削り丸くする。
このような形状はいたるところで逆目が現れるで、こまめに彫刻刀の向きや材を反対に持ち替えたりしながら慎重に彫る。

最後はサンドペーパーで仕上げる。

角作りは慣れないうちは手を切り易いので持ち手に保護用皮手袋を付けた方がよい。

字型カット時の端材で角を作った例     豚皮製保護用手袋、DIY店で500円ほど

角の貼り付けは木工用パテを使う、木工用パテは接着力も強く隙間にも充填されるので都合が良い。角を納めるホゾ穴は、9ミリ丸形彫刻刀で、ぐるっと円を描きながら彫る、意外と簡単である。電気ドリルを使い12Φくらいの穴をあけても良い、貫通しても特に問題はない。

角頂点間距離は16.5センチくらい。傾きは、角の中心線が水平面に対して35度±3度くらい。向って右側の角の傾きを僅かに多く取って少し伏し目にする(水平面から測り角頂上の高さが左側に対して10ミリほど低くなるくらい)。

 このように右側の角を伏し目にする理由は、能面舞台橋掛りからは、恨み骨随の怒りを現して入場する、この時、右顔が観客に面することになり、角はピンと立っている。
しかし退場するときは、左側が面し、悟ったり、僧に悟されたりして、穏やかな表情で
帰るので、角は伏し目となって能楽師の心の状態の表現を助ける。ということである。

 一般に、能面は左右非対称で、例えば左側が厳しい場合は右側は穏やかな表情に作られているのが多いとされている。

 特に、女面等は、意識的に左右非対称の組み合わせを打つとされており、例えば、左に対して右がきつい表情@、その反対A、左右対称のものB、の3種の微妙な違いが存在することになる。ある専門家は著書で「能面師が意識して打ったのではなく、この3種類が出来るのは自然である、特にこのような僅かな違いは観客席から眺めて、判定は不可能である」との趣旨を読んだことがある。機会があれば、能楽師の方や能楽見学を趣味とされている方々に、この件をお聞きしたく思っている。
 しかし、明らかに能面師が意識をして左右非対称に打った能面も多くある。、

最終仕上げ彫りは、自然な綺麗な
カーブになるよう仕上げるが、
この場合若干もとの型紙ライン
からはずれるが、

型紙は参考の形であり、むしろ最終仕上げの方が正しい姿であると考える。

 

以上で彫りは終了

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