珍しい方法によるヤンマ捕り

蜻蛉は捕りやすい昆虫だ、小学校高学年にもなると、狙いはヤンマとなる、何と言っても大型である、薄緑色は美しく、大きな田の上を優雅に旋回する姿は蜻蛉の王様だ。

しかし捕るのは困難である。通常は田のあぜ道に補虫網(タマと呼んでいた)を持って潜んでいる、近くに飛んで来たときタマを振りかざし捕まえる。

大抵一枚の田に一匹縄張りを主張して飛翔しているが、最近の田では見たことがない、激減の種なのであろう。

ホリカケ(放り掛?)による捕獲 

実に珍しいヤンマの捕獲方法である。

ホリカケ

直径5mmほどの釣り用鉛を赤い布の小片で「きんちゃく」状に包む。
これを80cmほどの細い絹糸の両端にくくりつける。これがホリカケである。


2つ折りにして折り目を右手の指でつまみ待機する。集まった
子供達は、ヤンマが飛来してくると、一斉にその方向に素早く走り、めがけて投げる。ヤンマは餌の昆虫だと思い一瞬動きが変わり捕獲行動に移る。このとき細い絹糸が羽や胴体にからまって地上に落ちてくる

 
 この方法で捕れるのは、夕刻に限られ、場所もヤンマがよく飛来してくるある学校の校庭に限られている。夏の夕刻毎日子供達は多く集まってくる、このような場所にヤンマの好む虫が多くいるのであろうか、丁度投げかけたホリカケが届く高さで飛んで来くる、比較的頻度は高く、一日に10回以上現れることが多い。不思議なことにここで捕れるのは雌ばかりである、雌のヤンマを「アブラ」と呼んでいる、羽の色は雄は透明であるが、雌は茶色味を帯びた油色をしているからであろう。

 しかしこのような方法で捕獲できるのは、1人当たり、1シーズンに一匹捕れればいい方である。

 群馬県の勤務先で同じ年代の人々に聞いてみたが、全員そんな方法は知らないと言っていたので非常に珍しい捕獲方法だと思うが、おそらく関西の各地に伝わっている方法でないかと思っている。

雌を求める雄の習性を利用した捕獲方法

この方法には雌を捕獲して確保しておく必要がある。雌は昼間飛び回っていないようで単品で捕るのは難しい、一つは「ホリカケ」で捕った雌を使うがこれはめったに捕れるものではない、もう一つの方法は、昼間の水辺に産卵のために雌雄繋がった状態(方言でジョッカと呼んでいた)で現れるのを捕獲する。一度に2匹捕れるので子どもたちはいきり立つ、湿地帯や小さな溜池に現れることが多い、動きがにぶくなっているし、産卵時は水に接し一瞬静止するので巡り合わせがあれば比較的捕りやすい、かくして雌を確保する。 

さて確保した雌を細い糸でくくり釣竿の先端に一方を繋ぐ、丁度鮎のおとり釣りと同じような形である。鮎は縄張りを利用するが、ヤンマの場合雌を求める雄ということになる。

釣竿をかざして雌を飛翔させる。雄は一目散に飛んでくる、百発百中である。繋がったのを見届けてタマで捕獲する。

オニヤンマについて

 オニヤンマはギンヤンマより一回り大きい我が国最大の蜻蛉である。幼少の頃は、これを捉えたときは自慢し合ったのだが、狙って捕りに行ってもなかなか捕れないので、蜻蛉捕りとしての魅力はなかった。今はほとんど見ることはない。

最近、私の住んでいる群馬県太田市の児童公園に行った。街はずれの丘の麓に建てられた広大な公園である。自然も豊かで、子供たちの遊具も豊富で人気のスッポトである。この中に小川(多分人工であると思うが)があり、上流の沢から中流域を再現している。綺麗な水が流れ、蛍の生息にも取り組んでいるようである。驚いたことに、この小川の流れに沿って「オニヤンマ」が悠々と行き来している。「こんな所にオニヤンマが生息していたのか」、太田市も残された自然を大切にしなければと思った至る所で残された武蔵野の雑木林や密度の高い古墳群が次々と破壊されているが)。

 

2014年ミャンマーに旅行した、広大なインレー湖の水面を悠々と飛翔しているオニヤンマを数多く見た。日本の半世紀以上の風景が残されていた。このような自然を大切にして頂きたいと思った。

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