小布施にて北斎を想う  長野県小布施町紀行

 

 かねてから小布施に行ってみたいと思っていた。

観光スポットとして結構人気が高く賑わっている。小布施栗もよく知られている。

私の行きたいのは若松院である。「八方睨み鳳凰図」を一度拝観したかった。弟子でもある後援

者の豪商高井鴻山宅に滞在中、1年かけて若松院の天井壁画として描いた。畳21枚分の大きさを

有し、北斎89歳時の晩年渾身の大作である。一度も塗り替えをしていなく今にしても色鮮やかで

ある、絵具はすべて輸入の宝石を砕いたもので、色が褪せない理由と言われている。

金箔も含め当時150両を費やしたと記録に残っているそうで、鴻山の財力があってのものだ

ろう。150両は今のレートでは 2千万円から3千万円と考えられる。(注参照)

 私が度胆を抜かれているのは、89歳にしてあの強烈な若々しい独創的・斬新的な構図、情熱

的な色彩・大胆かつ繊細なタッチ、心の底までえぐられそうな鳳凰の鋭い眼差し。その迫力に圧

倒された。凄いの一語である。

 北斎はその後江戸に帰り90歳で亡くなっている。北斎の富嶽36景はよく知られているが、

まだの人は是非小布施に足を運んでこれも見て頂きたく思っている。


北斎のスケッチについて 

  北斎のスケッチ集をみると我々素人目にも驚嘆させられる。一本の墨で正確に生き生きと描か

れている。絵から飛び出しそうである。

西洋の見識者の言を借りると、「レンブラントなどはスッケチの上手な画家と言われているが、

北斎の足もとにも及ばない、ほとんどの画家は、薄い幅広い線でまず輪郭を描いてから本線を決

めている、しかし北斎は一発勝負の墨で細い一筆書きで一気に描いている。世界一のスケッチャ

ーは北斎である」と。超天才のなせる技である。


注 150両という金額

 現在に換算すると、2千万円は超えるということになるであろうか。

小布施は蕎麦でもよく知られているので蕎麦の価格で換算をしてみると、江戸時代には1杯16文

ということが現在にもよく伝えられているので都合が良い、その名残として蕎麦屋の看板に十六

とか、二八(にはち十六つまり2×8=16のこと)が見られる。小布施で食べると結構高いが

全国的な平均を一杯500円と見積もると、1両を6500文とすれば、1両で蕎麦400杯分 現在の蕎

麦400杯は、500円×400=20万円で1両20万円のレートとなり、絵具代の150両は3千万円となる、

日本銀行金融研究所貨幣博物館のホームページの資料を参考に、大工の賃金で換算すると

1両はのレートは32万円だそうで、150両は4千800万円となる。

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