難しい漢字である、「こべしみ」と読む、口を一文字に結んだ状態を意味する。達磨の原型という説もある。
能楽「鵜飼」に地獄の鬼として使われる面である。密猟の罪にとわれ、簀巻きにされて川に沈められた鵜飼老人の
亡霊が僧の前に現れ、罪を悔いて冥土へと戻ってゆく。鵜飼は生前僧に善行を施したことがあった。
僧は法華経の文字を石に刻み弔いを捧げていると、地獄の鬼「べしみ」が現れ、鵜飼の老人を極楽に届ける事を
告げる。無間地獄に落ちる運命であったが、生前僧に施した善行と法華教の力で成仏がかなった。
地獄の鬼は法華教の徳を讃え消えて行く。法華教を讃嘆する宗教色に満ちた能楽である。